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      お茶屋

      Posted by admin on 2008 年 5 月 24 日

      次にお茶屋についてであるが、「茶屋」と称しても喫茶店ではない。 祇園甲部、祇園東、上七軒が、つなぎ団子をマークとしているのは、八坂神社、北野神社に参詣の客の為の茶店が発展してできた花街であるからで、 お茶屋という名称はその名残なのだ。
      茶店の頃はともかく現在ではお茶屋は全部「一見(いちげん)さんお断り」である。 「一見さん」とは初めて見る客という意味であり、つまりは完全会員制ということなのだ。 入会金などはいらないが、馴染みの客の紹介がなければ足を踏み入れられない、いかにも敷居の高そうなこの店を、どう理解すればいいのだろうか。
      一口に言ってイベント企画会社のようなものである。屋形(やかた-置屋のこと)は、プロダクション、芸妓はタレントといったところであろう。 お客が酒席をもうけたいと思いお茶屋に相談すれば、女将が屋形へ電話をかけ芸妓や舞妓の手配をする。 会場がお茶屋であれば酒や料理の手配(京都ではお茶屋と料理屋は分業されており、お茶屋で食事をする場合は料理屋からの仕出しとなる)、 ホテルや料理屋での宴席であるならば往復のタクシーの手配等々。お客の要望によっては料理屋や旅館、二次会のスナックの紹介までする。 そして花代や御祝儀、諸経費は全てお茶屋がたてかえ、後日まとめてお客に請求することになる。
      馴染みの客ならばサイフを忘れても一晩安心して遊べるというこのシステムは、お客とお茶屋の間に相当の信頼関係がなければ成り立たない。 「信頼できるお客様のご紹介ならば…」という「一見さんお断り」のしきたりは、300年の歴史の中で必然的にできた先人の知恵なのだろう。 またお客の立場からすれば、お茶屋の馴染み客となることは、仕事はもちろん、氏素性、マナーもきちんとしていると認められたという事であり、 京都の経済人の間で、お茶屋で遊ぶことが一つのステイタスになっている理由はここにある。
      現代社会の中でイベント企画としてのお茶屋の仕事はかなり多様化してきている。 酒席に限らず、イベントへの派遣、地方、海外への出張、繪や写真のモデルに舞妓が使われるのもしばしば。 着付教室の生徒(女性に限る)に、男衆(おとこし)と呼ばれる着付けの専門職が、芸妓舞妓の着付けを実演してみせることもある。 お客がある程度自由に企画でき、それに柔軟に対応していけるシステムであるからこそ、お茶屋遊びは幾時代も続いてこられたのだ、と言っても過言ではない。
      お茶屋の平均的な造りは、まず格子戸をくぐると玄関の間があり、すぐ二階へ続く階段が見える。二階はお座敷。 広間、表、中の間等々呼び名はお茶屋によって様々だが、2~3部屋あるのが普通。 一階部分、玄関の間の奥はお台所(おだいどこ)。炊事場ではなく、事務室兼茶の間の様なものだ。 女将が帳面をつけたり、芸妓がお酒や扇子を取りに来たり。 座敷よりこの雰囲気が好きなどと言って、なじみの妓や女将とうどんをすするお客もいるが、そこまで遊びなれる迄にはたいがいの時間がかかる。 お台所の次は奥の間。普通は女将の居住空間だ。次に「裏」と呼ばれる炊事場があり、中庭があったり、その向こうに離れ座敷があったりする。 舞妓の部屋やカラオケルームを持つお茶屋もあるが、いづれにしろ間口が狭く奥行きが広いウナギの寝床造りがほとんどだ。 この京都独得の建築用法はそのまま京都人の精神とも受け取ることができる。

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