「見世出し」-其の二-
Posted by admin on 2008 年 5 月 25 日
さて、晴れの見世出しの日、朝早くから「見世出しの割れしのぶ」という形に髪を結い上げ、プロの顔師のよって化粧がほどこされ、黒紋付きに身を包む。宮川 町の舞妓全員と関係者の芸妓、女将たちがぞくぞくと集まり、化粧や着付けを見守る。故郷から両親が出てくることが多い昨今では、親たちが大勢の芸、舞妓に 圧倒されながらも娘の晴れ姿にカメラやビデオカメラを回す姿がほほえましい。やがて姉芸妓が正装で登場し、ひとまず小部屋に移動して、姉芸妓、仲人、見習 い茶屋の女将たちが、門出に際して廓の人間としての心得を諭し、鯛やおめでたの品々の並んだ祝膳に形だけ箸をつけて、いよいよお茶屋や師匠宅への挨拶回り に出発となるが、この際、背後から切り火をしてもらい左足から玄関を出るのがしきたりとなっている。
見世出しは3日間、姉芸妓と二人で挨拶もお座敷もまわる。屋形、仲人、見習い茶屋をはじめ、姉芸妓のひいき客、関係筋の芸、舞妓のひいき客からも座敷がか かり、ほとんど10~20分間隔で宮川町中を回って歩く。西陣織の丸帯の重みと共に舞妓としての責任の重さもズッシリと感じられて、どの妓も笑顔が緊張気 味なのが可愛らしい。
お披露目を済ませて正式に舞妓になると、お稽古事も、長唄(唄と三味線)、鳴物、お茶が加わり、足繁く歌舞練場に通わねばならない。舞を含めてこの4つは 宮川町の芸、舞妓の必修科目であり、「多芸に秀でるのが名妓」とする宮川町の方針に沿うものである。他にも、笛、琴、小唄、端唄、常磐津、清元等々の課目 があり、多い妓は8~9つもの稽古に通っている。
お稽古の合間には、「お茶屋さん回り」をするのが1年生の義務である。44軒のお茶屋を毎日「○○どす。またおたの申します」と頼んでまわるのだ。お茶屋 が留守の場合は、メモ用紙に書いて戸口に挟んでおく。出たての妓はひいきの客がいない為、お茶屋も声を掛けにくい。「誰でもいいから呼んで」というお客が あった場合、毎日挨拶回りに来てくれる妓を、と思うのは人情であるり、そこがらごひいきが出来たりする。「あれもしてくれない、これもしてくれない」と、 してもらうことばかり考えている現代っ子達が、他人に何かしてもらうためには自分から足を運び、何度でもお願いするのだ、ということを認識するのに重要な ポイントだ。
雪の降る日でも、舞妓達はコートもショールも着ずに宮川町中を回って歩く。舞妓の一年生は紅を下唇にしかささない。古来日本の女性は紅は下唇だけさしてい たのが慣習として残っているのだが、いかにもおぼこく、可愛らしく見える。見世出しから一年経って姉芸妓の許可を得て上にも紅をさす頃には、白粉もきれい にのる様になり、仕草も一人前の舞妓らしくなっているものだ





